式が終わって神父の前から退場する時、綺麗な新婦に変身した友達が私とビデオ通話で繋がっているもうひとりの友人のカメラに向かって笑顔を向けた。わざとそうした、と思った。どきりとしてうっかりスクショを忘れた。あまり最近聞かない言葉で言うなら「チャーミング」、ちょっと格好良くさえあった。それが私に向けられたことに驚いた。向けられたと一瞬で確信したことにも驚いた。久しく他人ときちんと交わっていないし、基本恐ろしくて人の顔を見ないので。
初めて笑顔にこういう衝撃が伴った。忘れられない他人の表情。カメラ越し、通信越し、距離数100キロを隔てて向けられたこちらに対する認知。自分にそういう笑顔が向けられるとは思わなかった。嬉しかった、綺麗だった、では済まされない、だって私は今その笑顔のせいで思考促迫して泣いているので。
